グリーン・ツーリズム等の農山漁村を舞台とした旅行商品づくりは、市町村なかんずく中山間地域市町村にとって、極めて重要な活性化施策である。そして多くの市町村や関係団体が公的支援により開発及び販路拡大のための事業を展開している。先進的に取り組む地域の取組から成功するための重要事項を拾ってみると、いつくかの共通する事項が浮かび上がってくる。
第一に、ニーズがどこにあるかを掴むことと、つまり売り物の魅力は何かを考えていること。第二に、具体的な参加募集活動方法を考えていることである。
ある旅行会社の開発担当者は、「作ることは難しくない。問題はいかに売るかだ。販売戦略なくして商品開発計画は、考えられない」旅行を作り売るということは、規模の大小、数の多少にかかわらず商品をどう売るか、いかに消費者に認知された良い商品を継続的に、かつ類似商品に比して有利に販売するか。そのための総合的な戦略なくしては勝てない。
具体的なグリーン・ツーリズム商品の開発からツアー実施の経過を追ったグリーン・ツーリズム商品コンテストの経過から事例を紹介することとする。
6.具体的な商品開発事例
【ケーススタディ1】
「いすみツーリズム2010 房総いすみで美と健康と癒し体験ツアー」
提案は「NPOいすみライフスタイル研究所」と「近畿日本ツーリスト」。
いすみ市の女性たちが、移住者の増加を目的に、女性の視点で旅行企画しました。
ツアーも「女性限定」と対象を絞りこみ、地元産の安全で新鮮な食材を使った食事と豊かな自然環境を満喫しながら美容と健康に効果的なヨガやセラピーを入れた癒しのプログラムを体験する内容です。加えて、すでに地域で魅力的な活動している移住者との情報交換を通じて、飾らない農村の姿、ライフスタイルの魅力を引き出そうという野心的な商品である。
今回、実施された体験ツアーは、いすみ市への移住者を増やす目的に、いすみに移住した女性が中心になって企画されたツアーなので、ターゲットは、農山漁村を新たな生活の場所として移住したい女性を対象としている。したがって体験の内容も農林漁業のみならず、移住者が生き生きと生活しているライフスタイル自身を体験・見聞してもらい、いすみの魅力をたっぷりと理解してもらおうという企画でまとめている。
また、最近の旅行の新しい形として注目されている現地集合現地解散型、いわゆる着地型旅行商品として販売され、田舎暮らしの雑誌、WEBサイト、クチコミ等で知った女性8名が本ツアーに参加した。
今回の優秀賞に選定されたGT商品を企画したのは、大花慶子さんという自らもいすみへの移住した女性。移住のきっかけも田舎暮らし体験ツアーであった。自身の経験から田舎暮らし、新しいライフスタイルの実現等、女性の農山漁村への関心が高いことを十二分知っていることから、女性限定の田舎暮らしに向けた体験ツアーを企画。1年程度移住の体験・考えを活かしてできたツアーは、これまでの田舎暮らしとは全く違うコンセプトの内容であり大変驚くと共に、都市と農山漁村の交流に移住者、特に女性の活躍が極めて効果的であると実証された。参加者の評価も上々で、通常の旅行では得られない感動、情報が得られたという意見が多かった。
大花さんのように地元では気づかない地域の魅力をツアーに盛り込んだり、都市生活者の目線で、企画を考えたりすることで地域資源を掘り起こし視点も大変魅力的になる。農山漁村の若者や移住者を活用して、商品の企画づくりは都市農村交流にとっては極めて効果的ではないか。
情報発信においても、NPOいすみライフスタイルの大花さんらスタッフは、
① スタッフのブログ
② WEBサイト・メルマガ
③ Mixi
④ ツイッタ—
⑤ 「田舎暮らしの本」イベント欄
によって、情報発信することで、集客活動を実施し、広告費0円!で参加者を集めた。それほど多人数の参加を目的にしたツアーではないものの、本件を含む4つのツアーを昨年の10月から2月まで、毎月のように実施したことから考えると、この自分たちで行う集客に向けた広報活動は大いに参考になる。
他のツアーの実施日と参加人数
●11/20 農的田舎暮らし体感ツアー:大人15名子供4名
●12/21 房総いすみで子育て体感ツアー:大人9名子供7名
●2011年2/26-27(1泊2日)
農的田舎暮らし体感ツアー:大人16名
目的が明確で、かつターゲットも絞り込み、情報発信の方法も身の丈のあった方法でツアー実施のための参加者を確保する。自分たちでできる最良の方法を実践しているといえるであろう。
この方法はぜひ参考にしていていただきたい。