コテージ付き貸し農園「クラインガルテン」
「クラインガルテン」って何だかわかりますか? もともとドイツ語で「小さな庭」を意味するこの言葉は、日本では「滞在型市民農園」のことを指します。「滞在型」とわざわざことわるのは、普通の市民農園とは違って、台所やトイレなどを備えたコテージ(ラウベ)がついているからです。利用者は、週に数回、ここに宿泊しながら農作業を楽しみます。
クラインガルテンは全国的に増えています。1993年から全国50弱の農園に1000区画が整備され、田舎暮らしブームも追い風となって、利用者は少しずつ増えています。
その先駆け的な存在が、兵庫県多可町八千代区(旧八千代町)のクラインガルテンです。
山あいを流れる加古川の支流、野間川沿いに集落が点在する八千代には、これといった観光資源があるわけではありませんでした。戦後しばらくは、冬の寒さを生かした凍豆腐(高野豆腐)づくりが盛んでしたが、工場生産が主流になると、まもなく衰退してしまいました。入れ替わって町を支えてきたのは播州織でした。しかし、こちらも1980年代前半をピークに下降線をたどりました。八千代の農家は、常に時代の波をかぶり続けてきました。
「なんとか町を活性化させたい」。そんな思いを受けて、ここに「クラインガルテン」が誕生したのは93年春、全国で初めてのことでした。
谷に沿って開かれた田畑は大規模な農業には不向きでも、里山に連なる自然はかけがえのないものです。それを都会の人たちに開放したのです。
現在、八千代区には、「フロイデン八千代」「ブライベンオオヤ」「ブルーメンやまと」という3つのクラインガルテンがあります。合計110棟のコテージはすべて埋まり、約130世帯が予約待ちという人気です。
利用者の平均年齢は60歳強。阪神地区から通う人が大半です。八千代までは大阪から75キロ、神戸からは50キロほどですが、高速道路を利用すれば、1時間半から2時間。わずかな時間で自然豊かな土地に行けるのです。