特派員だより4(愛知県東海市)


[地域:中部]

平州記念館を訪れて(愛知県東海市)

郷土の偉人 細井平州

平州記念館

 愛知県東海市は、江戸後期の教育者で藩政改革にも影響を与えた細井平洲を郷土の誇りとしており、平洲記念館を設け、その精神と業績を讃えている。平洲関連の史料はもちろん、昔の生活道具や農器具、民芸品なども収集展示されており、郷土の歴史民俗資料館のような雰囲気である。


子どもたちが縄づくりを体験

縄づくりの様子

 ちょうど小学生たちが課外学習に来ていた。古びた機械が引き出され、縄づくりの実演が始まった。樋から藁を差し込み、両足でペダルを踏むと、大きな円盤(リール)が回転しながら藁を引込み、縄が出来上がっていく。子供たちは目を丸くし、歓声を上げながら見入っている。係員の実演に続いて、子供たちも縄づくりを体験。みんな好奇心旺盛である。小さな手足を動かすと、目の前で藁がよじられ、からみあって縄に仕上がって巻かれていく。「わー、すごい。縄ができちゃった!」魔法のような動きに大喜びである。製縄機と記された機械は、人力で動くシンプルな構造なので、藁を巻き込み縄にする仕組みもよく分かる。ものづくりの基礎となる機械の教材としても好適だ。


農業やものづくりの面白さを学ぶ機会を


 東海市は名古屋市南部のベッドタウンで、田畑も多く残っているが、藁に触れることさえ初めての子供たちも多いらしい。そばに置かれていた草鞋や蓑などの実物にも、手で触れながら興味深く話し合っていた。昭和40年頃まで、藁製品づくりはこの地で普通に目にすることができた情景だろう。しかし今では藁縄さえ目にすることがなくなっている。米づくりの身近な素材を加工し商品化するという昔の人の知恵は、日常の授業の何倍も有意義なひとときとなったことだろう。手作りの面白さや、素材が製品になる過程を自らの五感で体験できた思い出は、一生の宝物にもつながる。暮らしを支える農業やものづくりの面白さ大切さを、子供の頃から学べるこうした機会を、もっともっと増やしてほしい。