小値賀島は西海国立公園内に位置する島で、今日まで半農半漁・自給自足の生活を守り続けてきたが、近年では、島の暮らしの不便さから人口流出が進み、以前1万人いた人口も、3千数百人まで減少するなど過疎が進んでいる。
合併をせず「町の自立」を選択したことも影響して、平成17年度に有志が中心となり、「自然や暮らしをそのまま生かした体験型・滞在型観光による地域振興」を目指そうと「ながさき・島の自然学校」と「小値賀町アイランドツーリズム推進協議会」が活動を開始。
平成19年度には、観光協会をあわせた「NPO法人おぢかアイランドツーリズム協会」を設立し、小値賀のコンシュルジュ機能として、個人・団体、国内外を問わず、あらゆる顧客の要望に応じた「おぢかの島旅」のコーディネートを一括して行う、島のワンストップ窓口として取り組んでいる。観光相談から、島民がインストラクターとなって提供する自然・文化体験などの様々なパーツを組み合わせるオリジナル滞在プランの作成、来島の受付から体験料等の支払いまでを行うシステムを確立している。
平成19~20年に取り組んだ、アメリカの民間教育団体『ピープル・トゥ・ピープル』による国際親善大使派遣プログラム(以下PTP)では、住民、行政、ボランティアなど全島をあげて体制を整え、約1ヶ月の間にアメリカの高校生約180名を、3泊4日で受け入れ、民泊、自然体験、学校交流などのプログラムを行った。島をあげてのおもてなしを展開し、このプログラムに関わる島人は、人口3000人の島でのべ2000人にものぼった。その結果、世界各地のPTP全プログラムにおいて、小値賀を含む長崎プログラムが2年連続世界一の評価を得ている。
初年度の実績は総収入約6,000万円、集客数約6,000人泊が、平成20年度には総収入1億円、集客数約8,000人泊、事務局常勤スタッフも2名増え9名となった。非常勤として活動を支える会員は約100名、当初10軒にも満たなかった民泊事業も約50軒に増え、若者が体験インストラクターとして活動し始めるなど、全島に社会的・経済的効果が現れてきている。
国内外のあらゆる顧客ニーズに対応した受け入れ体制を整え、NPO活動は2年目ながら、行政からの運営補助金を受けず、事業収入で人件費等の経費を賄うなど、自立的経営を成り立たせている。町の委託で運営する宿泊施設「野崎島自然学塾村」の売上の一部を環境保全基金として町に寄付するなど、経済的な循環も生み出している。島全体が一体となって滞在型観光を推進し、小値賀島の活性化に大きく貢献している点が高く評価された。(「JTB交流文化賞」(株式会社ジェイティービー)よりご推薦。)
オーライ!ニッポン大賞グランプリ(内閣総理大臣賞)(1件)
特定非営利活動法人 おぢかアイランドツーリズム協会(長崎県小値賀町)
オーライ!ニッポン大賞(4件)
長沼町グリーン・ツーリズム運営協議会(北海道長沼町)
未来の消費者である子供たちに食べ物や農業への理解を深めてもらうことを目的として、新千歳空港や札幌市近郊に位置する地理的優位性と、11,500haの広大な農耕地を最大限に活用し、全町的な取り組みとしてグリーン・ツーリズムを推進。国の構造改革特区制度の活用による事業コスト低減策、また地元保健所との協議などによる一般の農家住宅の受け入れ体制整備を進め、現在では1日の宿泊定数は1,076名(農家民宿数159戸)。平成20年度は、小・中・高校の修学旅行生25校4,000名以上を受け入れ、家庭的な雰囲気の中で人と人との出会い(交流)を大切に活動を展開している。
特定非営利活動法人 NPOにいがた奥阿賀ネットワーク(新潟県阿賀町)
奥阿賀地区特有の地域資源の総力を結集させ、「地域と人」の双方に活性化が見込める地域再生事業として「体験交流型観光」を導入。「奥阿賀体験教育旅行」の民泊を柱に、町が進める定住対策と併せて、農家民宿開業、どぶろく等の特産品開発など交流人口の拡大策を駆使し、受入収入による農家所得の向上に努め、滞在型の都市農村交流事業を展開。企画から精算までの業務を一本化した「ワンストップサービス」の提供、一学年最大250名程度まで民泊受入の実現、緊急時の安全対策を整えるなど、地域に与える多面的な経済効果は1億円を超えている。
アストラゼネカ株式会社(大阪府大阪市北区)
2006年に初の本格的社会貢献活動として、医薬品企業が実施するにふさわしい「人と、人を支える環境に貢献する活動」で、「全従業員が一斉に取り組める活動」に取り組む事を決定。NPO法人棚田ネットワークとの協力のもと、年1回全社を休業し、全国55地区で全従業員約3,000人の社員が参加する棚田保全活動を実施。地区毎にキャプテンを決め、事前に受入地域と作業内容を話し合い、各地域のニーズに応じた具体的なプログラムを組み立てている。社内アンケートでも受入地域でも、放棄田の整備などの作業や交流が楽しかったなど、非常に満足度の高い活動となっている。
特定非営利活動法人 学生人材バンク(鳥取県鳥取市)
鳥取県内において、棚田保全や水路維持など、過疎化・高齢化によって困難になった作業を、学生たちを中心としたボランティアで取り組み、農地保全の支援を行っている。田植えやイノシシ柵設置等の農作業から、集落の人達と一緒にイベント等を企画・実践を行うなど、地域おこしに一役かっている。平成20年度(11月30日現在)は、延べ508人の学生が参加。活動集落も2004年当初11集落が、2008年には26集落になるなど、活動を広げている。また鳥取県内の農山村情報を「農村16キップ」という冊子にまとめ、年2回4,000部を発行し、情報発信を行っている。
審査委員会長賞(5件)
特定非営利活動法人 体験村・たのはたネットワーク(岩手県田野畑村)
これまでの典型的な通過型観光地から体験型観光へシフトする事により、旅行者の滞在を生み、住民との交流や経済効果拡大などによる地域活性化を図る事を目的に、漁村の営みを中心とした「番屋エコツーリズム」を展開。本物漁師が操縦する小型漁船で断崖を巡る「サッパ船アドベンチャー」、漁村文化をベテラン漁師が伝える「机浜番屋群漁師ガイド」等、20を超えるプログラムを提供。50名のインストラクター、民泊受入農林漁家70軒等の参加により、平成19年度の体験者数は5,650人と初年度(平成16年度)の434人から13倍以上伸びている。
特定非営利活動法人 NICE(日本国際ワークキャンプセンター)(東京都新宿区)
世界中の若者が2~3週間一緒に暮らし、地域住民とともに、環境・文化保護、福祉、農業などに取り組む国際ボランティアプロジェクトを展開。過疎・高齢化で継続が困難になったお祭り運営のサポートや、不足した地域自然体験プログラムのスタッフとして参加するなど、農山漁村地域が抱える課題を解決するため若者を派遣し、国内40カ所以上でプロジェクトを実施している。2008年は、31ヶ国から245名、日本から263名の若者が参加。活動の結果、参加した若者が農業を始めるためIターンをしたり、地域農産物が海外で販売される等の効果を生んでいる。
大北(ダイホク)農業協同組合(長野県大町市)
全国に先駆け、JAが窓口となり、昭和46年7月より都市(消費者)と農村(生産者)とを結ぶ一つの手段として、農家民宿を活用した交流事業「夏休み子ども村」(小学生対象)をスタート。翌年から「春休みスキー教室」に発展し、年2回の交流事業を38年続けている。昭和58年には、都市住民のニーズにいち早く対応し、また果樹農家の発展に寄与するため、「りんごの木のオーナー制度」を開始。現在は500本の契約数に拡大。その他、日本生活協同組合連合会と連携した生協グリーンライフ(体験交流型の旅)を受け入れるなど、取組み範囲を拡大している。
すさみ町商工会・都市と農山漁村交流事業推進委員会(和歌山県すさみ町)
釣りの楽しさ、伝統文化、ほんまもんの食の安全・安心などすさみの素晴らしさを体感できる「海と里の大学」を開校。遊漁人口の拡大、高齢者生きがい対策、「魚」をキーワードに家族ぐるみの「食育」を目指した遊び心たっぷりの大学で、地元の釣りの達人がインストラクターになり、釣具づくりから調理して食べるまで、魚に関するノウハウを伝授している。また、姉妹都市である大阪府寝屋川市との「すさみフェアin寝屋川」を通じて、年間2,000人を超える交流を展開するなど、商工会が中心となり、交流人口の増加や定住、観光振興に積極的に取り組んでいる。
坂本グリーンツーリズム運営委員会(徳島県勝浦町)
坂本地域の住民が中心になり、廃校(旧坂本小学校)を活用した農村体験宿泊施設「ふれあいの里さかもと」を運営。平成14年3月のオープン以来、「出来ることは何でもやってみよう」の精神で、地元のおじさんやおばさんがインストラクターを務める農業農村体験や、地元の主婦が作る田舎料理などを中心に展開し、利用者ニーズへの積極的かつスピーディーな対応を心がけ、独立採算で運営する力をつけてきている。町内の地域づくり活動団体と連携してイベントやシンポジウムを開催するなど、明るく未来のある農村づくりに寄与している。
オーライ!ニッポン フレンドシップ賞(3件)
おおせ元気っ子クラブ(茨城県日立市)
平成13年5月の「おおせ元気っ子体験村」(日立市で初めてとなる7泊8日の通学合宿)の実施をきっかけに、学校でも家庭でもできない体験を地域ぐるみで行おうと、会瀬学区コミュニティ推進会の青少年育成部内に「おおせ元気っ子クラブ」を開設。会瀬小学校の3、4年生を対象に、月1回、年間を通じてさまざまな活動を実施している。『地域住民とふれあいを深め、「子育て、子ども時代」を会瀬に住んでよかったと思う地域づくり』の推進という青少年育成部の重点目標の下、元気っ子クラブでは、(1)地域の特性を学ぶ、(2)海を守るためには山の環境を学ぶ、(3)体験を通して自然の大切さを学ぶの3つの目標を定めて取り組んでいる。(「コカ・コーラ環境教育賞」(財団法人 コカ・コーラ教育・環境財団)よりご推薦。)
下呂温泉旅館協同組合(岐阜県下呂市)
乱開発による源泉の枯渇や温度低下の危機を乗り切り、温泉の安定的な供給を図るためお湯の集中管理システムを導入。食材の共同仕入れ事業等の努力もあり、平成2年の宿泊客数は年間165万人にも上ったが、景気低迷で年々減少し、平成16年にはピーク時の約2/3まで落ち込んだ。こうした厳しい状況の中、地域への誘客を促進するため、旅館協同組合の青年部を中心とした活動がスタート。交流イベントの企画・開催や「健康」と「食」をキーワードにした滞在型観光に向けた取り組み、地元の農・畜産業者とタイアップし、飛騨牛をはじめ、トマトやマイタケなど、地元の食材を旅館で提供するなど、地域一体となった観光地づくりを進めている。(「優秀観光地づくり賞」(社団法人日本観光協会)よりご推薦。)
特定非営利活動法人 島の風(沖縄県伊是名村)
「島のこしが島おこし」のミッションのもと、島の優良な自然環境、景観、伝統文化、自給を中心としたエコロジカルな生活スタイルを残し、守り、伝えることで開発に頼らない次世代に継げる持続可能な観光をめざし活動している。さらには、それらの取組を有効に活用し、住民が主体的に取り組むコミュニティ・ツーリズムというコミュニティ・ビジネスの構築も推進。従来の「商品提供型観光」から「運動提案型観光」へシフトチェンジを図り、美しい島をつくること、美しい島を守ること、美しい島であり続けることが、島おこしに有効に機能することを実証する新しい「環境観光」という概念の構築を目指している。(「市民が創る環境のまち“元気大賞」(特定非営利活動法人持続可能な社会をつくる元気ネット)よりご推薦。)
ライフスタイル賞(3件)
川井達弘(カワイタツヒロ)(秋田県大仙市)
高校卒業後、就職列車で上京。夜間大学に通いながら2~3の企業を経て、日本IBMに入社。約30年間勤め上げ、平成5年に妻と二人で故郷の秋田にUターン。他人にわたっていた生家を退職金で買い戻し、農業を営む傍ら、生家を「自在屋」と名付け、都市住民を対象とした田舎暮らし体験塾を開塾。世帯数32戸102人の村に、これまで延べ3,400人が訪れ、村人27名が当塾の指導者として手助けをしている。都会生活34年、田舎暮らし33年の経験を生かし、「都市と農村の交流」の架け橋を担い、秋田県移住・交流ブロガーとしても活躍中。
Rogier Uitenboogaart(ロギール アウテンボーガルト)(高知県檮原町)
製本のアトリエで働いていた時に手にした一枚の和紙に衝撃を受け、自分の目で確かめたいと1980年に来日。高知県の旧紙業試験場で研修をきっかけに高知に定住し、和紙の原料栽培から手漉き和紙の技術を習得。土佐和紙伝統の技術を元に、オリジナルな手漉き和紙を創作し、近年はオランダ伝統の手漉き和紙である「コットンペーパー」の技術も取り入れ、環境型紙作りにも取り組んでいる。地元小学校では、校庭で原材料から栽培して卒業証書を漉く技術を指導。2006年には紙漉体験民宿「かみこや」をオープンし、檮原和紙という新たなブランドを世界に向けて発信している。
大津耕太(オオツコウタ)・大津愛梨(オオツエリ)(熊本県南阿蘇村)
大学卒業後、環境コンサルタント会社を経て、ドイツの大学へ進学。農学部の国土保全学科を学ぶ中で、農業・農村のもつ魅力や可能性に触れ、農業への関心が高まる。帰国後、土を踏まない東京で農業・農村を考える仕事をする事に不満が高まり、郷里である南阿蘇へ移住。専業農家である叔父の後継者として、地元生産者組合で作る無農薬のおあしす(おいしい、あんぜん、しぜん、すてき)米を中心に、あか牛(繁殖)や夏場の露地きゅうりに取り組んでいる。修学旅行生の受入、消費者との交流イベント、年間50組以上の宿泊を受け入れるほか、ブログ等を通じて農業・農村の素晴らしさを伝えている。