水資源に恵まれた知床半島
午前6時、沖合の国後島の島影が昇る朝日に浮かび上がります。それは、グオン、グオンというエンジン音を轟かせ、70隻あまりの漁船が羅臼港を出発する時間でもあります。張りつめた氷をバリバリと割りながら、わずか10分ほどの間に、続々と出航する漁船の勇姿は、圧巻という言葉がぴったりで、見るだけで心がわくわく躍ります。
オホーツク海は、カナダ大西洋沿岸、ヨーロッパ北海と並ぶ世界の「三大漁場」に数えられています。オホーツク海に突き出した知床半島は、水産資源に恵まれ、なかでも国後島と知床半島の間に広がる根室海峡は、とりわけ豊かな漁場です。
その理由はいくつかあります。宗谷海流と東樺太海流が合流し、そこで発生したプランクトンの数が多いこと、海底の起伏が大きく、魚が育つための栄養分が豊富にあることなどがあげられます。また、根室海峡には暖流、寒流、両方が流れ込み、とても水流が早いのです。そのためにここの魚たちは水流に負けじと懸命に泳ぎ、健康で元気になります。こうした理由があいまって、種類、量ともに他に類を見ない、「魚の城下町」が誕生したのです。