オーライ!ニッポンの旅 大賞受賞地域を訪ねて
第4回 沖縄県東村
慶佐次マングローブ林カヌーツアー


マングローブの林を観察しながら、エコロジーについて考えよう!


国の天然記念物となっている沖縄本島最大のマングローブ林を身近に観察できるカヌー探検ツアー。修学旅行生をはじめ小さな子どもから大人まであらゆる世代に人気の自然体験プログラムです。マングローブ林周辺に住む生物や東村の環境を熟知したガイドが、参加者の年齢や興味の対象に合わせてさまざまな観点からわかりやすく解説。カヌーから降りるときには誰もがマングローブ林博士になれるほど、マングローブやその周辺の自然とたっぷり親しめるツアーです。


沖縄本島最大のマングローブ林にこぎ出そう!

カヌーのこぎ方を教わったらいよいよ出発。幼児でも保護者と2人乗りなら参加可能です。

 マングローブとは、海水と淡水の混ざり合う河口などに生息する熱帯・亜熱帯植物の総称です。東村・慶佐次川(げさしがわ)のマングローブ林は、オヒルギやメヒルギなどのヒルギ類が中心となり、多彩な生物が生息するジャングルを形成しています。

 慶佐次川のマングローブ林は海に接しているため、干潮時は干潟になり、カヌーで進入することはできません。そのかわり干潟をピョコピョコ歩く小さなカニ(ハクセンシオマネキ)を観察することができます。


ふれあいヒルギ公園にあるカヌーツアースタート地点からのショット。ツアーの開催時間は潮の干満に左右されるので毎日変わります。気象庁のホームページなどで満潮時間を確認しましょう。



 潮が満ちてきたら、いよいよカヌー探検へ出発。カヌーは軽くこぐだけでもスイスイ進み、めったなことでは転覆しないので初心者や子どもでも気軽に参加できます。ツアー開始前に15分ほどのカヌーのこぎ方レクチャーもあるので安心です。


マングローブ林や川に住む、魅力的な動植物

マングローブの呼吸根。砂泥の中は酸素が少ないため、空気中からも酸素を取り込みます。
根がタコの足状(支柱根)になっているヤエヤマヒルギ。オヒルギはひざのように曲がった根(屈曲膝根)、メヒルギは板のように平べったい根(板根)の形をしています。

 慶佐次川のマングローブ林には、それぞれ木の高さや根の形などに特徴があるオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギの3種のヒルギ類や、その他植物が生息しています。

ヒルギ類は塩分の濃い河口域で生き抜くため、吸収した塩分を複雑な形をした根で濾過したり、葉に塩分を蓄積したりなど、さまざまな知恵を使っています。

その他、水の上を飛び跳ねて移動するミナミトビハゼや、手を広げると30cmほどにもなるカニの一種ノコギリガザミ、小魚を目当てにやってくるサギやカワセミなど、運がよければたくさんの魚や鳥などを見ることもできます。


オヒルギの胎生種子。ヒルギ類は木についたまま芽を出す胎生種子をつくるのが特徴です。ヒルギ類はこの胎生種子が水中に落ちて流されたり、干潟に突き刺さったりすることで繁殖していきます。
パイナップルのような実をつけるアダン。川をさかのぼっていき、汽水域(海水と淡水が混ざっている場所)から淡水域へと変化するにつれて、ヒルギ類以外の植物が増えてきます。


マングローブを通じて地球環境を考える

 東南アジアなどに広く分布しているマングローブ林は、他の樹木で構成される森林と比べて二酸化炭素の取り込み量が多く、それに比例して酸素の排出量も多いそうです。地球温暖化にかかわっているとされる二酸化炭素の増加は、マングローブ林を含む熱帯雨林の伐採が一因であるともいわれています。

東村のマングローブ林は国の天然記念物に指定されており、葉っぱ一枚取ることも持ち帰ることも禁止されています。まずは日本のマングローブ林とふれあい、その美しい景観やユニークな生態系を守る大切さを学ぶことで、世界の環境についても考えるきっかけになるのではないでしょうか。
教育体験旅行でやってくる中学生は、徹底的にほめて、どんな子もヒーローにして帰してあげるという。そんないくちゃんの温かさに包まれながらのワーキングホリデーは、きっと一生忘れられない宝物になるでしょう。


マングローブ林の奥へ進むと川幅が狭くなり、左右からマングローブがせまってくるような迫力。木を傷つけないように注意して進みます。
ヒルギの幼木。この1本からマングローブ林がまた受け継がれていく。



※本文中のデータは、2007年3月取材時のものです。予めご了承ください。