1,000年以上続くゆたかな草原を守る野焼きを支えよう!
カルデラを取り巻く勇壮な山々と噴煙を上げる火口丘、そして広々とした草原が織り成す、阿蘇ならではの雄大な景観。阿蘇の草原の見事さは、平安時代の文献にも記載されており、その歴史は1000年以上にも及ぶといわれています。草原を維持するために欠かせない、野焼きを手伝うボランティアの取り組みをご紹介します。
毎年3月、阿蘇の野山は炎に包まれる
阿蘇の春の風物詩にもなっている野焼き。毎年3月頃になると、阿蘇地域百数十ヶ所で、枯野原を焼き尽くす炎が見られます。何メートルもの高さになることがある炎の迫力は凄まじく、一般の人は近くに立ち入ることができません。
燃やされた草原は真っ黒になるため、初春の阿蘇は黒々とした空間が方々に顔をのぞかせる、不思議な景観が広がります。
草原の維持に必要な野焼き
野焼きは、草原の表面を焼くことで、火に強く牛馬がエサとして好むイネ科の多年草(ススキ・ネザサ・シバ等)を残し、火に弱く利用の邪魔になる低木(サルトリイバラ・ノイバラ・アキグミ等)を除去するためにおこないます。阿蘇の草原は、自然にできたものではなく、千年も前からの野焼きにより、人の手によって守られてきたものです。
草原は、野焼きをやめるとススキの堆積により古野化・雑木林化し、防火面に加え景観の上でも問題となります。また、草原に生息するハナシノブ・ヒゴタイなどの希少な植物が保全されているというメリットもあります。
野焼きは、阿蘇の美しい景観を守るため、そして阿蘇あか牛の放牧に必要な牧草地を維持するため、欠かすことのできない重要な作業なのです。
迫力ある野焼きを間近で体感できるボランティア
野焼き関連のボランティアを募集している 財団法人 阿蘇グリーンストック では、3月頃におこなわれる野焼きと、8~10月におこなわれる輪地切りの支援ボランティアを募っています。2000年に「グリーンストック野焼きボランティアの会」が発足してから、現在、会員は約560名に。ほとんどが九州都市部からの参加ですが、大阪や関東から足を伸ばしてくる人もいます。
野焼きボランティアは、草原の火が必要以上に燃え広がらないよう消していく作業が主になります。火や煙がすぐそばまで迫ってくることもあるので、熟練した地元農家の指導のもと、真剣に取り組まないと危険を伴います。
一方、8~10月におこなわれる輪地切りは、火とは無縁の草刈作業です。野焼きの火が周囲に燃え広がるのを防ぐため、周りの草を刈り取ります。地道な作業ではありますが、さわやかな夏~初秋の阿蘇の景色を堪能できるとあって、毎週のように参加する人もいるそうです。
はじめて野焼きボランティアに参加する人は、2月に開催される初心者研修会を受ける必要がありますので、毎年1月頃に阿蘇グリーンストックにお問い合わせください。