第10回オーライ!ニッポン大賞 グランプリ(内閣総理大臣賞)
震災復興・地域支援サークル ReRoots(宮城県仙台市)


[地域:東北]

受賞者の概要


ひまわりプロジェクトの圃場とReRootsスタッフ

活動年数:2年弱
活動日数:365日
活動拠点施設:仙台市若林区沿岸部近くのボランティアハウス
活動エリア:仙台市若林区沿岸地域の農地
参加者数:約15,000人(平成24年8月末まで)


受賞の内容


農地の地中の瓦礫は、農業機械を痛めないように、スコップを使って手作業で行う必要がある。

ボランティアとしての農業支援だけでなく自ら野菜づくりを実践。

 宮城県有数の農業地帯だった仙台市若林区東部において、東日本大震災の甚大な津波被害からの復旧・復興に向けて、被災農家の生活再建に不可欠な農地とコミュニティの再生に取り組んでいる。スタッフの9割が大学生だ。
 組織の母体となったのは、震災時に東北大学の近くにある川内コミュニティセンターに避難した学生や地域住民による避難所の運営ボランティアだった。
 ボランティアハウスをオープンした平成23年7月から24年9月までに参加したボランティアは延べ15,000人。ボランティアを毎日受け入れられる体制を構築している。農家からの依頼の件数は309件、関係をもった農家は130軒を超えている。
活動の特徴は、「復旧から復興へ、そして地域おこしへ」をコンセプトに3段階で活動を構想した点にある。
 第1段階は、農地のガレキの撤去や側溝の泥だし等の復旧作業。民家や流木などの大きなガレキの撤去は重機を使用して完了しているが、キャタピラによって畑の土中に埋め込まれたガレキが残ったままとなっている。どんなガレキが埋まっているか分からない状態では農業機械で土を耕作することもできず、作物もうまく育たない。このため、スコップを使って手作業で取り除く必要がある。
 第2段階は、ガレキを撤去した畑での作付と農業支援。機械が流されているので機械の貸し出しや作業の手伝いも 行う。ブログへのアクセスは1か月20,000ページビュー、ツィッターのフォロワーは2,000人を超えた。現在も毎月1,500~1,800人のボランティアが継続的に参加している。
 ボランティアとしての支援だけでなく、スタッフ自ら野菜づくりを行う「ReRootsファーム」や、農家と協力して市民農園を開設している。市民農園は2箇所あり、一方は被災者向け。もう一方は一般市民が被災地に家庭菜園をもつことで被災地に人が出入りする仕組みを作る狙い。
 さらに被災地の景観を再生するため、40アールの畑にひまわりを植え、収穫した種を福島県で障害者の授産施設を運営するNPO法人に送り、ひまわりオイルに加工してもらう「ひまわりプロジェクト」も実施している。
 第3段階は、将来に向けた「地域おこし」。当地区は農業を基盤としていたため、震災前から後継者不足、高コスト、低価格を背景とする諸問題を抱えていた。大規模圃場整備のような復興支援と同時に、農地の利用調整、担い手確保、付加価値の実現といった課題を解決していく必要があるが、農家同士ではなかなか話し合うことができない問題も多い。ReRootsはボランティア活動を通じて培った信頼関係を土台にして、将来の地域と農業のあり方を模索するための媒介役になれればと考えている。すでに、ReRootsファームで作った野菜を「フクイのカレー」(愛知県)が商品化して販売。24年11 月には仙台朝市で若林区の農家が作った野菜を販売するショップ「りるまぁと」をオープン。今後は新規就農者確保に向けたファームステイや大学生の農業インターンシップ、販路開拓にも取り組む考え。


講評


 延べ15,000人のボランティアを受け入れて農家の復旧・復興を支援してきた構想力と実行力、震災から1年7か月を経過した今も活動を継続している持続性、ブログやツィッターによる情報発信力など、大学生が中心の活動としてはレベルが高いと評価されました。中長期的な地域貢献への関与にも期待が高まります。


若林区復興支援ショップ「りるまぁと」


 平成24年11月、仙台朝市に仙台市若林区の野菜やグッズを販売する店舗「りるまぁと」がオープンしました。
 毎週土曜日、朝9時から午後4時まで営業しています。
 若林区の復興の様子と農家の努力をReRootsスタッフが発信し、収益を地域支援活動に使います。