第7回むらの伝統文化顕彰
農林水産大臣賞


「肥土山農村歌舞伎」
肥土山農村歌舞伎保存会(香川県小豆郡土庄町)


■ 活動の概要
 貞享3年(1683年)、庄屋太田伊左衛門典徳が、私財を投じて築造した灌漑用ため池(蛙子池)が完成し、その水が伝法川を伝わり、肥土山離宮八幡神社の境内へ流れてきたことを祝って、当時の村人が仮小屋を建てて芝居をしたのが始まりと言われている。
 肥土山歌舞伎は、蛙子池の水神祭や離宮八幡神社例祭の奉納歌舞伎として、また祝事や農閑期の娯楽として上演されてきた。役者の高齢化と後継者不足で定期公演に苦慮する時代を経験。その後、昭和42年に歌舞伎後援会を結成、その後、昭和61年に現在の保存会の名称に改め再結成し、後継者育成及び、舞台・衣装・道具類の保存管理を行っている。
 平成8年には、青年部会を後継者育成会として立ち上げ、現在43名の会員が役者・下座音楽・義太夫・大道具・化粧・床山部会の中で、年間を通して定期的(月2回程度)に技術の習得・伝承に取り組んでいる。現存する舞台は、明治33年(1900年)に改築されたもので、間口17.10m、奥行8.82mの寄棟造りで、大屋根は茅葺き、本瓦葺き下屋付で島内舞台の代表的な建物で、平成20年には地元民による茅葺き大屋根の改修を行う予定となっている。
 肥土山歌舞伎には、肥土山地区内の全戸・全住民(約230戸、約800人)が歌舞伎公演に参画している。地区内6組が1年輪番制によって定期公演の準備から運営を行うことで、各地区の競争意識を生み、運営活動が活発化したことが継続の大きな要因になっている。
 また子ども歌舞伎は、少子化に伴い地元小学校が廃校になり、学業との兼ね合いにより、小学生高学年(4~6年生)全員を対象に、1月~5月の3ヶ月間、奉納歌舞伎公演を目標に稽古を行っている。

■ 講評(評価のポイント)
 農作物の生育に欠かせない灌漑用ため池の完成に端を発している肥土山農村歌舞伎は、その当時のむらの喜びを今日まで伝えるものが感じられる。人口約800人の中で、芝居の継承、舞台や衣装の維持など体系的に活動を行っており、儀式的にも技術的にも高い水準を維持している。特に、後継者育成については、それぞれで会をつくり、現在43名の後継者が育っているということは、大きな成果といえる。後継者不足・少子高齢化により、地域の伝統文化の継承が危ぶまれる中、安定的に体系的に農村歌舞伎の保存・伝承をしている点を特に高く評価した。