第5回(平成19年度)オーライ!ニッポン大賞
審査委員会長賞


特定非営利活動法人 自然体験村虫夢ところ昆虫の家(北海道北見市)


 北海道道東オホーツク沿岸に位置する北見市常呂町の豊かな自然を生かし、小学4年生~中学3年生を対象に自然体験活動事業を実施している。
 1989年に子ども達が自然と触れ合える施設をつくりたいという思いを持った一人が、既に養豚場となっていた廃校の施設を自費で買い取り整備を進めていたところ、地域の目に触れ一人一人と仲間が増え、創設者の死以降もその意志を引き継ぎ、虫夢の会を結成。2001年にNPO法人として組織体制を整備し、受入施設と自然体験活動の充実を図っている。
 原則として月1度開催される「週末自然体験活動」では、森探索、水中生物観察、ヤマブドウ・コクワ採取、杵と臼を使った餅つきなど、その季節に応じた自然体験活動を実施。また夏休み期間を利用し、14日間の長期自然体験合宿を体験する「いきいきオホーツク自然体験村」は、昆虫の家の他、サロマ湖周辺、網走や中標津などをフィールドに、主に都市部から参加する子ども達・スタッフを併せて総勢50名程度で構成するプログラムで、農家・漁業体験を始め、昆虫採集、カヌー体験、川の中の生き物観察、竪穴式住居への宿泊、里山探索など、地域の名人や先生が、それぞれの得意分野で講師を務めている。また、拠点である昆虫の家の維持管理・補修作業など、全て会員のボランティアで行うなど、地元に支えられながら地域が一体となって活動している点が評価された。



共生のむら すぎさわ(山形県金山町)


 山形県金山町にある杉沢地区は、金山町でも最も山奥に位置し、13戸(46人)が点在する小さな集落で、冬季は2メートルの積雪におおわれる地域である。1993年に山村で豊かで暮らす事を考えて創造する「暮らし考房」をスタート。翌年に、哲学者内山節氏を迎えての山村フォーラムの開催により、都市部からの来村が増え、1998年に町に第三セクターのホテルが建つと同時に、体験と民泊の村が「共生のむら すぎさわ」としてスタート。以後、楓の樹液を採取し商品化を行う山形県金山町にある杉沢地区は、金山町でも最も山奥に位置し、13戸(46人)が点在する小さな集落で、冬季は2メートルの積雪におおわれる地域である。1993年に山村で豊かで暮らす事を考えて創造する「暮らし考房」をスタート。翌年に、哲学者内山節氏を迎えての山村フォーラムの開催により、都市部からの来村が増え、1998年に町に第三セクターのホテルが建つと同時に、体験と民泊の村が「共生のむら すぎさわ」としてスタート。以後、楓の樹液を採取し商品化を行う「メープルサップ研究会」や、7人の山村案内人と10人の森の案内人が山里の暮らし体験を受け入れる「体験のむら」、空き家を都市住民と買い取り(25名の所有)、休暇と交流の場として活用する「山村金山スロー村」などを展開するなど、山村に新たな仕事を生み出し、年間約600万円の収入をつくり、年間2,000人あまりが訪れるまでになっている。
 またこの活動は、地域への波及効果も大きく、若者林業グループ「親林倶楽部 森の案内人」が誕生し、現在、東北地区にチェンソーアートのブームを起こしたり、「すぎさわふるさと倶楽部」、「すぎさわ味倶楽部」の二つの産直が始まったり、高校、大学生のインタープリターの出入りが増え、森林環境資源学や地域づくりをテーマに大学で講義をもつなど、活動の幅を広げている。小さなむらという特性を活かし、経済的に持続性のある地域住民と都市住民との多才な交流活動をしなやかに展開している点が評価された。



特定非営利活動法人 市村自然塾関東(神奈川県松田町)


 市村自然塾関東は、子ども達が農作物の栽培から収穫・調理の体験や経験を通して、多様な自然の摂理を学び、子ども達による共同生活を通じて「自主性・自立性・自律性や創造性などの資質を育む場」を提供することで、青少年の健全育成の一助になればという想いから、株式会社リコー及びリコー三愛グループの創業者である市村清氏の生誕100年を記念して平成13年10月に設立されたNPO法人で、『生きる力を大地から学ぶ』を基本理念に、「農耕」「自然体験」「共同生活」を基礎に置いた自然体験活動を行っている。
参加の対象は、小学4年~中学2年の異年齢の児童・生徒、男女各28名ずつで、隔週末2泊3日、年間18回で、主に東京23区や多摩地区、神奈川県川崎市、横浜市から参加しており、今年度で6期生298名を受け入れ、平成20年3月から7期生56名を受け入れる予定である。
 プログラムは、春先の畑作りから収穫までの通年型で、収穫された40品目を超える農作物はみんなで食し、土曜の朝・夕、日曜の朝の3食のご飯を竈と歯釜を使って炊き、子ども達と一緒に仕込んだ味噌でつくる味噌汁や配膳、食器洗いまで子ども達が担当している。農作業の合間に行うホタルの観察や夜空観察、清流での川遊びなどの野外環境活動、農産物の加工や陶器づくり等を通じて、道具の正しい使い方や安全を感じる感性も養っている。また地域への感謝と環境保全の大切さを養う観点から、地域清掃ボランティア活動を実施するなど、CSR(企業の社会的責任)活動における先進的な事例として評価された。



輪島市「子ども長期自然体験村」実行委員会(石川県輪島市)


 平成11年度に文部省(当時)・農林水産省連携「子ども長期自然体験村」事業を契機に、以降9年間、横浜市と石川県内の小学4年生~中学3年生までの子ども達をそれぞれ30名ずつ計60名、約2週間受け入れる宿泊体験事業を実施している。
 1班10人程度にわかれて異年齢・異地域の集団生活を送りながら、輪島の自然体験(海水浴場、ネイチャーゲームなど)、農林漁業体験(地引き網、味噌作りなど)、伝統文化体験(草木染め、輪島塗など)、環境保全活動(下草刈り等)を地元住民等の指導の下で行っている。宿泊は主に、輪島市町野町曽々木地区の農林漁業体験民宿を活用し、班毎に模擬的な家族を形成して、洗濯、掃除等を含めた協同生活体験を行っている。その間の子ども達の相談役として、大学生や学校非常勤講師を登用した班付指導者を置き、これまでは地元出身の学生が中心に募集を行っていたが、金沢の大学生ボランティア団体や、里山里海自然学校と連携を図りスタッフの派遣を受けたり、過去に参加した横浜の子ども達が、班付指導者として参加するなど、活動の継続の効果が現れてきている。
 平成11年度からの受入数は今年度で505名になり、本事業に子どもが参加したことをきっかけに家族で能登へ訪れる事例が生じるなど、都市農村交流に広がりが出てきている。
 約2週間という長期の受け入れを行う体制がしっかりと整っていること、また平成19年度からエコツーリズムの視点を取り入れ、森林の伐採・下草刈りや、千枚田の手入れなど、農山漁村体験や自然体験から一歩進み、環境保全活動へも活動を広げている点が評価された。



就実高等学校(岡山県岡山市)


 就実高等学校では、生徒達が農山漁村地域と交流し、相互の生活や歴史・文化を理解するという地域理解教育を進めていくため、北海道旭川市の南東部に位置する戸数20戸、人口約100人の就実地区と交流を行っている。
 平成16年に創立百周年を向かえた就実高等学校の歴史を検討する過程において、北海道旭川市に「就実」という地区があることを発見。学校名と地名が一致すること、校名と地区名の就実の由来が一致すること(「戊申詔書」の中にある「去華就実」が由来)、また学校近くを流れる旭川と旭川市が同名であるなどの共通点があったことに興味を持ったことがきっかけに交流へと発展。
 交流の1年目は資料研究を行い、交流2年目には職員6名が就実地区を訪問し、地域との交流を深め、交流3年目の平成17年から高校2年生の修学旅行のコースとして取り入れられた。これには旅行業者が一切関わらず、生徒と教員と就実地区自治会が連絡を取り合いながら準備を進めている。生徒達は就実地区に約半日間滞在し、農作業体験としてカボチャの植え付け作業、記念植樹、交流会を行うプログラムで地域と交流を深めている。
 交流4年目には、平成3年の就実小学校閉校以来歌われていなかった「就実音頭」を就実高等学校で復活。また修学旅行後に行われる文化祭では、就実地区で栽培された農産物の販売も行われ、その売上金は就実地区自治会の地域活動の財源として入金している。
 生徒と教員と受け入れ地区によるオリジナルな体験プログラムを作成し、高校生という若い世代が積極的に都市農村交流に取り組んでいる姿が評価された。



有限会社 シュシュ(長崎県大村市)


 地元専業農家8戸が経営するおおむら夢ファームシュシュは、地域農業の活性化を図るため、都市農村交流拠点施設を建設し、地域の農産物の生産、製造、加工、販売による農業の6次産業化を目指すとともに、都市住民との交流を図り、地域農業の振興や農業後継者の育成を行うことを目的に、平成12年4月に開業。以来、農産物販売所、地元農産物を使用したパン・アイス・洋菓子の各工房での加工品の製造・販売、地元食材にこだわり、郷土料理も提供するレストランの運営など多岐にわたる経営を行っている。いちごやぶどう、グルーベリー等の収穫体験も行うことができ、収穫した直後にイチゴ大福やスイーツを作る体験は、食育体験や修学旅行等のメニューにも利用されている。
 また、料理体験を通じた食育にも力を入れており、大村産の食材を使ったハンバーガー教室や、ホットドッグを自分たちでいちから作って食べる「レインボー体験」等は人気メニューである。
 消費者と農業者の交流を図るためのイベント開催も多く、消費者向けの情報誌やホームページの情報発信も積極的に実施。平成19年度からは、団塊世代を対象とした農業塾を開校。毎月1回の講座に県内外から84名が受講しており、農家民宿、就農希望、定住希望等、様々な要望が出ており、希望にそうよう実践している。
 シュシュでは、観光農業で消費者に感動を与え、後継者に希望を与える夢のある新しい農業を目指している。地元専業農家の地域農産物を活かした取り組みにより、平成18年度の来場者が約47万人になるなど、地域の活性化に大きく寄与している点が評価された。