平成29年度 第6回農山漁村コミュニティビジネスセミナー【イノシシの捕獲から資源化までの取り組みと地域を活性化】開催結果
登壇者
福岡市出身。2014年より島根県に移住し、イノシシ肉の営業、企画、販売業務の責任者を務める。前職で培った地域づくりコーディネーターとしてのノウハウを活かし、「おおち山くじら」という地域ブランドが地域内外で認知されるよう活動を行っている。2007年 九州大学大学院 生物資源環境科学府 農業資源経済学科 修了。2008年 株式会社マインドシェア入社 地域づくりコーディネーターとして従事。2014年 島根県美郷町 地域おこし協力隊着任。2017年 株式会社おおち山くじら設立 代表取締役就任
セミナー開催報告(2017年11月9日開催)
地域おこし協力隊員の女性が会社を興し社長に就任!
婦人会のダンスの集まりは、イノシシ産業化に欠かせない場。
平成29年度 第6回(通算第125回)農山漁村コミュニティ・ビジネスセミナーは、農作物が食い荒らされ、深刻な鳥獣被害により全国の農家が悲鳴を上げているなか、捕獲したイノシシを有効利用して6次産業化を図り、地域活性化のツールとして活用している先進的な取り組みを紹介していただきました。 島根県美郷町にある「おおち山くじら生産者組合」は、イノシシによる被害に対応するため、猟友会依存の体制を改め、農家や自治会関係者も含めた駆除班を編制し、主体的に活動しています。休止していた既存の食肉処理施設をイノシシ処理施設として活用し、捕獲個体の資源化にも取り組んだことにより、捕獲鳥獣の処分負担の軽減にも繋がり捕獲頭数が増加しています。 また、イノシシを「おおち山くじら」と命名してブランド化をすすめ。食肉として出荷するほか、町内の女性グループが中心となって食肉加工品や皮革製品を開発・販売するなど、捕獲したイノシシを有効利用して6次産業化を図り、地域活性化のツールとして活用。このイノシシの捕獲から資源化までを行う取り組みには多くの町民が関わっており、獣害対策を契機とした地域づくりのモデルとなっています。この活動が評価されて鳥獣被害対策優良活動表彰 平成24年度 農林水産大臣賞(団体の部)しました。 美郷町で駆除捕獲された猪の約80%を回収・処理し、その肉や皮を地域資源として役立てる取組みをしています。美郷町では毎年一定数の猪を駆除することに成功していますが、猪を撲滅させることを目的とはしていません。野生動物の生息環境を守りながら境界線を設け、共に生きることを目指しているのです。 そんな美郷町民の想いを受け、生命あるものを地域資源として大切に活用することで、自然と共存・共栄することを目指しています。農林水産省でも「ジビエ利活用で元気な地域づくり」を促進していますが、その中でも最先端の取組と言ってよいかと思います。
第6回セミナー事務局のまとめ
第6回セミナー「【イノシシの捕獲から資源化までの取り組みと地域を活性化】は、森田朱音さんと株式会社クイージ代表取締役 石崎英治さんのお二人からお話しを伺いました。森田さんは、島根県美郷町の地域おこし協力隊員として、3年間「おおち山くじら生産者組合」でイノシシの駆除活動や獲得したイノシシの活用を行う食肉加工品や皮革製品を開発・販売するなど活躍し、おおち山くじら生産者組合と森田本人の今後の活動を見据えて、株式会社おおち山くじら設立し代表取締役就任しました。地域おこし協力隊員を卒業しいきなり社長に就任するという快挙も驚くばかりですが、おおち山、美郷町での鳥獣被害対策からはじまったイノシシの活用のあゆみも物語に、セミナー受講者の皆さんも食い入るように話に引き込まれました。 なかでも、他の地域と異なると思うのは、ハンターによる駆除隊を解散し、農家自らが狩猟資格を得て、駆除登録を行い、実践するということ。 イノシシの食肉加工品の開発・販売を戦略的に展開していること。 地域のさまざまな婦人グループと連携して、革鞣し商品(レザークラフト)の開発販売、青空サロン市場など町を挙げての取り組みに力を注いでいること。駆除隊の登録は、4,800人の町民のうち、約100人が登録していること。駆除隊に登録している人々は、70歳以上が大半を占めること。生体捕獲移送による食肉加工は、高い品質を維持することができるが大変なこと等々、まさに「皮を切らせて肉を切り、肉を切らせて、骨を断つ」というような、リアルな戦法ばかりです。 講義の後半を石崎さんが担当し、ジビエ業界取り巻く様々な話。(例えば、フランスのジビエと日本のジビエの違いやイノシシの解体にまつわる処理場や罠や刺し止めなどの業界用語などの話等々。)めったに聞けない実情を教えてもらいました。 特に参考になったのは、経営の話と今後の見通し。元コンサル会社にいた経験から、売上をアップするには、単価×数量=売上の簡単な法則から、どう考え実践しているかを丁寧に教えていただきました。石崎さんは、森田さんが設立した株式会社おおち山くじらの共同代表にも就任していますが、これは、石崎さんがおおち山くじらのイノシシを卸している関係から関わっているのです。鳥獣対策として考える現場、美郷町役場とこれを産業、商品として育成販売する石崎さんとの何度にもわたる意見のやり取りを通じて、こんにちの取組が構築されてきたのです。 森田さんは、美郷町住民として今後もこの土地で生活をしていく糧として、誰もがかかわられる仕事として、美郷町のイノシシ産業のイノベーションに日夜邁進し、石崎さんは、イノシシの食肉利用促進、シカやイノシシなどの野生獣肉を〈伝統肉〉と再定義した「NPO法人伝統肉協会」理事長として、獣肉食文化の普及啓発に取り組むとともに、ジビエの安定供給による産業化に取り組んでいます。肉屋として大事なのは、1.処理等数から算出してどれくらいの売上、経費がかかる事業計画を綿密に検討すること。2.処理と捕獲の分離。3.自治体との持続的な信頼関係の樹立が獣害対策から産業化への道。すなわちジビエ産業地域としての経営のポイントと言いました。
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