平成29年度 第2回農山漁村コミュニティビジネスセミナー【音楽を通じて地域を活性化】開催結果
登壇者
講師の河野文影さんは、市町村合併後の平成18年3月、54歳で浜田市役所(旧金城町役場)を退職。地域住民や音楽仲間と共に自力で整備を進める林間交流空間「夢の音村」(ゆめのねむら)建設活動の中心的役割を担いつつ、平成20年4月から平成28年3月までの8年間、公益財団法人ふるさと島根定住財団に勤務。しまね田舎ツーリズムコーディネーターとして島根県内の民泊や農山漁村交流実践者等の活動支援業務に従事。現在、夢の音村の拠点施設「森の公民館」での施設受け入れと、自らも民泊「風楼」の実践者として活動しています。昭和59年、文部省社会教育主事等欧州成人教育事情調査派遣団員として参加。平成6年、総務省・農水省欧州グリーン・ツーリズム調査団(故・山崎光博団長)に参加し、農山村の条件不利地における交流受入による地域づくりを学ぶ。平成26年、地域の多様な団体等に呼びかけ、「ゆめのねむら都市農村交流推進協議会」を立ち上げ、農水省「都市農村共生・対流総合対策交付金」3か年事業を実施。民泊・食・地域資源の活用など、交流受入基盤整備を推進中です。平成28年3月、「オーライ!ニッポン大賞グランプリ」(内閣総理大臣賞)受賞。
セミナー開催報告(2017年6月21日開催)
音楽が都市農村交流の扉を開けた
平成29年度 第2回(通算第121回)農山漁村コミュニティ・ビジネスセミナーは、第13回オーライ!ニッポン大賞グランプリ(内閣総理大臣賞)を受賞した島根県浜田市金城町の音楽を通じた地域活性化の取り組みを学びました。
1968年から49年間にわたり音楽による地域づくり活動に取り組み、農山村地域が抱える様々な課題に対応するため「音楽」をキーワードに青年世代の結集を進め、まちの人が楽しめる交流空間づくりを目指して音楽ホール、スタジオ、キャンプ場などの林間交流拠点施設を整備しました。
さらに、都市農村交流を行うために1995年に整備した森の公民館は開館以来20年独立採算で運営を行い、平成26(28)年度には、年間利用者約5,400(6,300)人、宿泊者約1,000(1,400)人の新たな交流を生み出しています。地域の資源はさまざまにありますが、音楽は高校生時代の趣味を仲間とともに活動する一貫のなかで、農山漁村地域活性化に役立てようと地道な努力が花を咲きました。
夢の音村「森の公民館」(サウンドファイブ夢の音会)は、1968年から49年間にわたり音楽による地域づくり活動に取り組む町内の音楽活動団体サウンドファイブ夢の音会により誕生した林間交流拠点です。
サウンドファイブ夢の音会の音楽活動は、1968年当時高校生だった現在の会長の河野文影氏等同級生の音楽好きの仲間5人による音楽バンド、ファイブシャドーズが原点。
高校を卒業後、地元を中心にライブ活動を続けたものの一度は解散、1972年にサウンドファイブとして再結成しました。その後、地域のイベントに出演するほか、はしだのりひこさん、坂田明さん、岡林信康さん、森田公一さん等著名なミュージシャンを招く音楽イベントのプロモートも行い1997年には堀内孝雄さんのコンサートを企画し超満員の大成功をおさめ、地域の皆さんと共に良い音楽を楽しみたいという思いが通じたことに大きく感動し、さらに地域の役に立ちたいという思いを強くしました。
このため夢の音会では、農山村地域が抱える様々な課題に対応するため「音楽」をキーワードに青年世代の結集を進め、まちの人が楽しめる交流空間づくりを目指して音楽ホール、スタジオ、キャンプ場などの林間交流拠点の施設整備を1985年から進めてきました。
さらに、都市農村交流を行うために「森の公民館」を1995年に整備し森の公民館は開館以来20年独立採算での施設運営を行い、平成28年度には「ゆめのねむら」都市農村交流推進協議会を設立して、年間利用者約6,300人、宿泊者約1,400人の新たな交流を生み出す取り組みに成長しています。
また、車で20分の距離にある海辺の民宿や広島市中心地のライブハウスと「施設間協力協定」を締結し誘客や情報発信などの相互補完協力を行うほか、東京都中目黒の小さなお食事処との「食」の研究及び誘客・情報発信における「協力協定」締結など、多方面との交流や連携を進めています。
大型の公演企画・運営にあたっては、200人の実行委員会を組めるネットワークを有し、すべての企画を手づくりで行います。堀内孝雄さんなど招いた著名人37組に夢の音村『名誉村民』の称号を贈り、市民との交流企画も実施しています。
「森の公民館」の初代館長には、森田公一(作曲家)を登用。以後、佐々木愛(女優)、白井貴子(シンガー)、ボニージャックス(コーラスグループ)、芦原すなお(直木賞作家)の各氏が無報酬で就任し、現在は六子(シンガー)に引き継がれています。
これまでに150回を超える自らのステージ活動や40回近いミュージシャンを招くプロモート活動など、町民の文化的要求に応える49年間の音楽活動は、多くの住民の認知を得るとともに高い評価を受けて町の“顔”として定着しています。
第2回セミナー事務局のまとめ
〇49年も活動が続いたのは、好きな音楽活動を通じた仲間との絆と自分達が住む地域のさまざまな問題に大人となって対応することが必要となり、その仲間を通じて取り組むことが可能となったことが大きな原動力と感じました。 〇なぜ、「音楽」をキーワードに青年世代の結集を進めることが可能だったのか。 それは、練習するための場所を作り解放したこと大きいと思います。約50年前に音楽(ロック)を楽しむ若者への大人の目は必ずしも良いとは思われませんが、浜田市では河野さんをはじめ若者たちへ暖かい目でみていただきましたが、大きな音を自由に出すことができる音楽環境はありませんでした。 〇また、まちの人が楽しめる交流空間づくりを目指して音楽ホール、スタジオ、キャンプ場などを自分たち仲間で整備したことが地域の人にも認められて、音楽から演劇まで幅広く楽しむというエンターテイメントの活動をまちの人も楽しみにしていく過程を一歩一歩作り上げだのだと思います。 〇河野さんは、行政や地域振興の団体で、さまざまな地域活性化の取り組みに触れるうち、 その活動を担う取り組みの中心人物として自らも実践していくことになります。 音楽の練習場づくりから林間交流拠点の施設整備。さらに、都市農村交流を行うために1995年に整備した森の公民館の運営と5期にわけて活動を説明しました。 〇河野さんのずぬけていると思うのは、感性が素晴らしいところです。夢の音村の交流事業のテーマには、外国人にも目を向けている。普段外国人に接することが少ない我々だが、河野さんは、視察に訪れたドイツ人の案内を通じて、島根の田舎を紹介するヒントをつかんだという。彼らがどのようなところに感動し関心を持っているか。わずかな機会にもヒントをつかみ、取り組みへの指針にしているというエピソードを見ても非凡なるものを感じます。 〇例えば、案山子のある田園風景。何気ない農村風景の中にも外国とは異なる日本の良さを大事する。こうした日々の好奇心は誰でも持っているものだと思いますが、言うは易し行うは難し。こうしたことが大事なことなのかもしれません。 〇それから、関係する人々の「出番」をつくり、「出足」旅孝行な人間関係の「出会い」「出前」する。「出来高」運営管理(赤字にしない)をきちんとする。など事業化には5つの演出を心掛けています。自分だけでなく、多くの仲間の力を結集するには、極めて大事なポイントがここに示唆されています。 〇また、自分たちの取り組みを客観的に評価してもらうフィールド評価委員会を設けるなど、経営の評価も第3者の目を通して改善しています。 〇さまざまな分野の仲間、知恵者と出会うことで、土木や大工仕事なども仲間で担うながら進めることができるし、新たなネットワークた新たなアイデアも得ることができるでしょう。 〇自分たちのフィールドのすぐ目の前には、田植え用の稲の苗を育てるJAの大きなハウスがありが、それは田植え時期を過ぎると空いている、そこで、このハウスを利用して音楽ドームとして活用したそうです。ちょっとしたアイデアでも可能性はさまざまにあることを教えてくれるます。柔軟な考えと実行力。人と関わることは大変難しいことですが、そうしたかかわりのなかなか、若者等の力の結集や地域との連携で、取り組みがますます前進していくことが可能だと実感しました。 〇今後は、【農山村の魅力・知力・人力を活かした活力ある田舎創生を考える】【多様な「連携軸」を見つける】という方針のもとに、自分たちでやれることからやる! 〇(風土・風景・風物・風味・風格・風俗・風評)と地域には7つの風が吹いている。 〇「交流・田舎体験」活動は仕掛けやシステムではなく、人と人との関係づくり。実践段階において、メニューや要素(地域資源など)に対し、『人』を付加(出番づくり)することが大切であり、田舎の日常・生活・暮らしそのものが資源。風土と密着していれば必ず魅力的なる。地域の人たちの「誇り」となる取り組みを目指そうと語ってくれました。 〇今後も夢の音村の活動に注目していきたいと思います。
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