平成28年度 第9回農山漁村コミュニティビジネスセミナー【限界集落が挑戦する未来のムラづくり】開催結果
登壇者
54才で高千穂町役場を退職後、高千穂ムラたび協議会を設立し、地域住民や若者と 未来のムラづくりをめざす 斬新な山村ビジネス起業に着手。現在62才。 無名の限界集落「秋元」を拠点に、「ムラたび」による山村価値の向上をめざし、エコミュージアム、直売所、食堂、農家民宿、農産物の加工販売などを住民連携の事業として立ち上げ、食堂・民宿の利用者は年間2,000人を超え、秋元神社への参拝など限界集落に年間約30,000人の交流人口が生まれました。あまざけ・どぶろくなど発酵食品事業を中心に若者が経営に加わるムラビジネスが急成長しています。平成28年 地方創生アワード:第3回「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」選定。特別賞(プロデュース賞)を受賞しています。 高千穂ムラたび協議会会長、㈱高千穂ムラたび代表取締役、高千穂町観光協会理事、高千穂町秋元集落自治会長
セミナー開催報告(2017年3月15日開催)
情報共有、意見調整は協議会、実際の活動は個々の事業組織で。
平成28年度第9回(通算119回)農山漁村コミュニティ・ビジネスセミナーは、民話の里宮崎県高千穂町。かつて林業で栄えたこの秋元地区も、時代と共に衰退。若者は働き場所を求め、村を離れていきました。
飯干会長は、「このままでは故郷がなくなってしまう!」危機感を抱き、勤めていた町役場を54歳で早期退職し、平成24年に「高千穂ムラたび」を立ち上げました。
「持続可能な村づくり」に取り組むために、若者らと共に、民宿やドブロクづくり、花卉(かき)や夏イチゴの栽培、イチゴやお茶の加工品製造販売、キンカンやクリなど地域特産品を使った菓子製造販売などを営んでいます。
また、ムラの魅力を観光や農村ビジネスのマーケット開拓に活かす取り組みとして、高千穂町観光協会と連携して高千穂ムラたび活性化協議会を運営。
スピリチュアルや大自然、古代史、食、伝統文化を複合的に組み合わせた誘客基盤を整備しながら農村に新たな価値を創造するコミュニティビジネスを手掛けています。
その努力が実を結び、「民宿まろうど」、「まろうど酒造」、「ムラたび農園」の3つの事業は、それぞれが事業の拡大期にある今、事務局スタッフも募集し事業を拡大しようとすすめています。
特に注目は、「まろうど酒造」。若者を中心とした事業体制、専門機関との連携など体制を整え、あまざけやどぶろくを生産するほか、川のりやはちみつなど希少食材を前面に、この集落でしか味わえない料理を農家民泊や古民家食堂で提供しています。
また、棚田など山間部特有の農業景観、秋元神社等神話史跡を活かしたエコミュージアムを展開するなどにより、直売所、加工品、農家民泊などの事業収入が倍増、訪問者が約4倍(2千人)、年間3万人を超える交流人口を創出するなどの成果をあげています。新時代の家族経営の6次産業化を中心に飯干会長からじっくりお話しを伺いました。
第9回セミナー事務局のまとめ
〇戸数40、人口約100人の限界集落からやってきました。今は限界集落は珍しくないけれど、若者が去りこのままでは、故郷がなくなってしまうと役場を早期退職して、農業、農家レストラン、農産物加工、農家民宿と6次産業化で集落を活性化させています。 〇秋元集落は、高千穂町の外れ、すぐ後ろには諸塚山があり、熊本県境もすぐ近くです。 〇秋元神社は、高千穂神社が現在の位置に移る前にあった場所に立ち、元宮・奥の院ともされています。今はパワースポットも知られていますが、寂れていました。 40戸ほどでは、立て直しもできなかったところですが全国から浄財をいただき綺麗に再建できました。全国に知られるということは応援してくれる人がいることです。 〇限界集落は地域の人々が元気になることが重要だと思い、田舎ら働き隊、地域興し協力隊など学生等若者が大分集落に入ってきたので、まずは彼らに何か売り物になるものを探させました。 〇若者がムラに入り、集落の人々に何か売りたいもの、売れるモノはありますか?と聞いても売れるものなんてありゃしないと回答が返ってくるばかり、そんな聞き方ではダメなので、何があるのか、どういうものを作っているのかを聞き取るように指示し探させました。 〇探し出した資源については、それを価格も自由につけ、パッキングも自分たちで行うようにし、一方学生たちには、街へ宣伝に行き集客に担ってもらい、直売所を始めてみたところ、村人は自分のものを始めて売って、自分たちの生み出すものに勝ちがあることに初めて気づくことになりました。これが、女性たちをやる気にさせた直売所のはじめです。 〇その後、古民家を改造しためし屋「しんたく」、さらにエコミュージアム機能をもつ牛小屋を改造した農家民宿など誰も来なかった集落に都市の人々が訪れ、地域のものを食べ地元民と会話するようになりました。 〇農家民宿は、絶好のマーケティングの場です。ホテルなどは、出来得るだけビジネスライクに受付等を簡素化するが、それではお客様が何を望んで、何に満足しているかをすぐに知ることができません。ところが民宿は、お客様と受け入れ側が会話をすることによって、何を望み、何を満足したかが手に取るようにわかるのです。そこが農家民宿を行うことの大事なポイントです。 〇お客様が何を望み、何を楽しんだか。また、地域の文化や地域の食をお話しすることで、物凄く価値がつくわけです。 〇当然、泊まるだけでなく、地域の文化や歴史も話すことができるから、より地域の魅力も深く知ってもらえるし、地のものの料理を出しながら説明することで高い満足も得られるわけです。(事務局注:このような高付加価値は、世界的な農家民宿や6次産業化では重要となる。低価格競争に巻き込まれない戦略。) 〇私のところでは、民宿に泊まる受付時に、細かく目的や何を求めているか等のアンケート調査の実施を取っています。回答者には、甘酒を1本サービスしているが、そうしたニーズを把握することが大事です。 〇イタリアなど欧州のグリーン・ツーリズムの民宿等を視察して、ホスピタリティや経営など優れた事例が多いが、そうした人は、外から来た人が多い。だけれどもその土地の人でないと歴史文化は語れない。農家民宿の本当の強みはそうしたとにあると思っています。 〇限界集落を活性化させるために、米からどぶろくや甘酒を作り販売しています。 原材料の米の買取は地元JAよりも1000円以上高め。麹の専門業者の協力により、自慢のどぶろく、甘酒ができました。昨年12月には、3倍の製造量を誇る設備に改善したがすでに2か月で対応できないほど需要は伸びています。それが悩みです(笑い)。 〇若者が毎年、入ってきているので、そうした新たなアイデアやネットワークの蓄積ができ、それがまた新たなネットワークとしてつながっています。 〇先進国の農業や農村の動きをみていると、これから農業だけで生活するのではなく農泊などと組み合わせていくことが重要だとよくわかります。私のところでは、東南アジアなどへの輸出も視野に入れて、若手に海外へ出張させています。
講演する飯干淳志氏
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